【名著から考える人材育成シリーズ】「星の王子さま」vol.1~おとなは、だれも、はじめは子どもだった。

【名著から考える人材育成シリーズ】「星の王子さま」vol.1~おとなは、だれも、はじめは子どもだった。

【2019年6月8日公開/2019年6月17日更新】

「おとなは、だれも、はじめは子どもだった。」
「大切なものは、目に見えない」

これは「星の王子さま」に出てくる一節だニー。

200以上の国と地域の言葉に翻訳され、世界中で総販売部数1億5千万冊を超えたロングベストセラーだ二ー。

この間、久しぶりに「星の王子さま」を読むと、すごく色々な気づきがあったニー。

人材育成についても活かせる部分やハッとさせられる部分がたくさんあったから、今回は「【名著から考える人材育成シリーズ】「星の王子さま」vol.1~おとなは、だれも、はじめは子どもだった。」について見ていくニー。

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つい忘れがちな「自分が出来なかった」ときのこと

「星の王子さまのまえがき」にあたるところに、こんな一節が出てきます。

おとなは、だれも、はじめは子どもだった。
(しかし、そのことを忘れずにいるおとなは、いくらもいない。)

このシンプルな言葉を聞くと、ドキッとさせられます。

言葉のとおり、私たちはみな「こども」でした。

  • 純粋な子供
  • なんでも探究心を持っていた子供
  • けれど、できないこともたくさんあった子供

そんな「子供」の頃のことを、私たちはつい忘れ、あたかも昔から大人だったように、なんでも出来たように勘違いしてしまうことがあります。

それでは、この「子供」を新入社員に置き換えてみたいと思います。

  • 純粋な新入社員
  • なんでも探究心を持っていた新入社員
  • けれど、できないこともたくさんあった新入社員

そう、今は立派に働く先輩方も、新入社員の時期がありました。

一度、自分自身にこう問いかけてみてください。

できなかった頃の自分を忘れて、「一人で大きくなった」ように後輩に接してはいないか。

純粋に疑問や喜びを感じていた新入社員の頃の自分を忘れて、「わかったような大人」になってはいないか。

例えば、会議で次のように行動してみてはどうでしょうか。

  • 少しでも「おかしいな」と思うことがあれば、声を上げてみる
  • 意図がわからない指示があれば「なんで?」と聞いてみる
  • 反対に新入社員から「なんで?」と聞かれたら、丁寧に回答してみる
  • 話についていけない子はいないか、よく観察してみる
  • 話を進めるにあたって、まだその業務を経験したことのない新人でもわかるように「前提」や「全体図」を感じさせてあげる

子供は素直です。

しかし、その素直さが良いように用くこともあれば、悪い方向に用くこともあります。
それは「環境次第」。

仕事も同じで、新入社員は素直です。

その素直さを生かすも殺すも「環境次第」

私たちは全員「子ども(新入社員)」だったのですから。
それを感じて接してみませんか。

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仕事のやりがいや楽しさは「教える」のではなく「体験する機会」をつくる

主人公の「ぼく」が6歳の頃。
象がうわばみ(蛇)に食べられた絵を描きました。それを見た大人は、何を書いたか理解できず、形だけを見て「帽子」と言ったり、「うわばみの絵なんかやめて、地理と歴史と算数と文法に精を出しなさい」と言いました。そんな大人に対して「ぼく」はこう言います。
「大人には、これはこうだ、と始終説明しなくてはならない」

さて、今の私たちはどうでしょうか。
何でも頭で理解しようとしていないでしょうか。

なぜ「頭で理解しようとする」のか。

その理由は簡単で「効率を求める」からです。

効率よくやるには「しっかり考え、理解してから行動すること」が大切だと、教え込まれるからです。

確かに、「考えること」は大切です。

しかし、世の中には「考えても分からないこと」がたくさんあります。

とりわけ、「仕事の楽しさ」や「自分の得意・不得意」は、考えても分からず、やってみて初めて分かることです。

入社したての子に「この仕事の楽しさは〇〇です」と語ったところで、頭で「理解したような気にさせる」ことはできても、本当の意味ではわかるはずがありません。

ですから、大切なことはまずは体験する機会をつくる事、それも「没頭する時間」「がむしゃらに取り組む時間」を作ってみること。

人は、時間を忘れるほど没頭して取り組んだ体験を振返ると「充実していた」「楽しかった」と言うことが多いと言われています。

というのも、脳には、「側坐核(そくざかく)」と呼ばれる快感物質のドーパミンを分泌する神経細胞があるのですが、集中力を保っているときは、この「側坐核(そくざかく)」が刺激されている状態なのだそうです。

「ウチの社員、口先ばかりで行動につながらない…」と嘆く会社様、もしかすると、みなさん自身が「頭で考える機会」ばかりを作ってしまった結果かもしれません。

例えば、

  • 作業であればゲーム性を持たせてみる
  • 会議室ではなく公園で会議をしてみる
  • 一番忙しい部署に新入社員の子を配属させてみる

など。

ぜひ没頭する時間、体験する機会を作ってみましょう。

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社員と話すときに「ついやってしまいがち」なこと

星の王子さまは、小さな惑星からやってきます。
主人公の「ぼく」は、その小惑星は「B-612番の星」だと話します。なぜ「小さな星」と言う表現ではなく、あえてB-612という数字を出したのか。物語の中に次のようなセリフが出てきます。「おとなというものは、数字がすきです。新しくできた友だちの話をするとき、大人のひとは、かんじんかなめのことはききません。<どんな声の人?>とか、<どんな遊びがすき?>ということは、てんできかずに、<その人、いくつ?>とか、<きょうだいは、なん人いますか>とか、<おとうさんは、どのくらいお金を取っていますか>とかいうようなことを、きくのです。

そうやって、どんな人か、わかったつもりになるのです。

さて、今の私たちはどうでしょうか。

採用面接のとき、社員面談のとき、どんなことを聞いていますか。

  • 何年その仕事をやっていますか
  • 何社受けていますか
  • お給料はどのくらい欲しいですか
  • ○○の仕事は、何分で出来るようになりましたか

そんな「数字の話」ばかりしてはいないでしょうか。

人材育成を考えるにあたって、数字は「指標」でしかありません。
現状把握にはなりますが、相手を知ることにはつながりません。

本当に大切なことは「相手を知る」ということであり、知るためには「相手に興味を持つ」ことから始めます。

皆さんが次に面談する機会があったら、こう尋ねてください。

「あなたが時間も忘れるときとは、どんなときですか?」
「あなたが昔好きだった小説やマンガは、何ですか?どんなところが好きだったのですか?」
「あなたの夢は何ですか?具体的には?」

数字でその人を判断するのではなく、「その人となり」を見る工夫をしてみてはどうでしょうか。

 

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■まとめ

このコラムでは「【名著から考える人材育成シリーズ】「星の王子さま」vol.1~おとなは、だれも、はじめは子どもだった。」として、星の王子さまを取り上げてみてきました。

1.「誰もみんな子どもだった。けれどそのことを覚えている人はいくらもいない」

  • 「できなかった頃」の自分を忘れてはいないか。
  • 純粋な気持ちを忘れて、「わかった大人」を演じていないか。

おかしいと思ったら声を上げてみる、「なんで?」と新人に聞かれたら丁寧に回答してみるなど、「子ども(新入社員)」であったことを意識して行動をしてみませんか。

2.「大人には、これはこうだ、と始終説明しなくてはならない」

  • 私たちは頭でっかちになってはいないか。
  • 考えてもわからない問いは、まず体験すること。

それも集中状態をつくり「とにかくやってみる」ことが新たな答えを知るきっかけになるのではないでしょうか。

3.「おとなというものは、数字がすきです。
新しくできた友だちの話をするとき、大人のひとは、かんじんかなめのことはききません。」

  • 人と話すとき、面接 で応募者と話すとき、「人となり」をみているか。
  • 「人となり」を数字で判断しようとしてはいないか。
  • 本当に大切なことは「相手を知る」ということ。

知るために「相手に興味を持つ」ことから始めませんか。

なお、本の解釈は人それぞれです。

今回は、筆者なりの切り口で読み解きましたが、これが「絶対の正解」というわけではありません。
御社の中で「星の王子さま」を題材として、社員教育やリーダーシップについて対話することもオススメです。

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