社内で実践!働き方改革の進め方(4)社内の現状を把握する

社内で実践!働き方改革の進め方(4)社内の現状を把握する

【2018年8月28日公開/2020年2月18日更新】

会社勤めをしている人に「働き方を変えたいですか?」と聞くと、「いや、別に…」という人が多いニー。

でも、「今の働き方や会社に不満は無いですか?」と聞くと、「無くはないが…」という人が多いニー。

「不満や希望はあるけれど、自分自身で働き方を変えるのは大変」
そう思うのは、普通のことだと思うニー。

働き方改革というととても大層に聞こえるけれど、実は「いま持っている不満」を「未来に向けた課題」と捉えなおすことなのではないかと思うニー。

今回は、感じている不満や想い、また社内の状況を正しく把握するにはどうすれば良いかを見ていくニー。

社内の現状把握①「経営数字」を把握する

経営数字とは、いわゆる「決算書」です。
売上はもちろんのこと、売上総利益、経常利益など。

何のために把握が必要かというと、労働分配率と生産性を調べるためです。

労働分配率は、簡単に言うと「粗利のうち、どのくらいを人件費に使ってますか?」という話。

生産性は、簡単に言うと「1時間当たり、どのくらいの利益を生み出していますか?」という話。

一概に「高いから、低いから」という話をするつもりではありません。

そうではなく、一般従業員の方は、これらの経営数字を意識してお仕事されている方は少ないということです。

良くある話ですが、社員の方から「社長、仕事が回らないので人を採用してください」という要望が上がり、それに対して、経営者からは「人を採用する以外に解決する方法を考えなさい」といわれる。

これは、社員は「仕事が回らない」ことの原因を「人員不足」と考えている一方で、経営者は人件費率をみているため、「人件費率が決して低いわけではない」と考えていることが原因です。

つまり、見ている視点が違うため、議論がかみ合わないのです。

もちろん、この企業において人が足りないのかもしれません。

しかし、他にも原因がある「かも」しれません。
それらを考えずに「単に人を採用すれば解決できる」というのは、いささか早計かもしれません。

まずは、互いに同じ視点を持つことが大切です。

このように、社内の課題を解決していくにあたっては、必ず意識しておきたい数字。
ですから、細かい経理知識は必要なく、「ざっくりと社内の現状を知る」ことが大切です。

社内の現状把握②「労務数字」を把握する

労務に関する数字とは何かを見る前に、まず労務について整理しておきましょう。

労務とは、「社員が安心・安全に働ける環境づくり」の役割を担っている仕事。

例えば、勤怠管理や給与計算、社会保険等の手続き、健康管理、福利厚生、安全管理の体制整備を指します。

大企業では労務課あるいは労政課、中小企業では、人事課あるいは総務課が担われていることが多いでしょうか。

この「労務」に関する数字とは、次に挙げる数字です。

・労働時間(時間外労働時間や、休日出勤日数等を含む)
・休暇管理(有給休暇取得率など)
・給与水準、総額人件費
・社員情報(社員の年齢、勤続年数、家族構成および年齢)

労働時間や休暇管理は、生産性を計算するのはもちろんのこと、改善後の効果測定に使います。
また、出ている利益と時間外労働の時間が比例しているのかという現状把握にも利用できます。

社員一人当たりの時間外労働時間が一か月80時間を超える中で維持している利益と、ほとんど時間外労働が無い中で維持している利益とでは、採る策が変わるのは明白です。

さらに、社員情報はこれからの人事施策を考えるうえで非常に貴重な資料です。
5年後、10年後、労働力人口が減る中で、わが社としてはどのような年齢構成で働くことになるのか。

育児や介護との両立を図る必要が出てくる可能性のある社員はどの程度いるのか。

社員数が少ない(例えば50名以下などの)企業であれば、社員情報一覧を作らなくても、大まかな情報はすべて把握されているかもしれません。

しかし、組織を変えるのは一人では出来ません。
経営トップや総務のご担当者様以外のメンバーとも、社員の年齢や勤続年数、5・10年後の予測される社員の状況を共有するためにも「見える化」されることをオススメします。

これらを「正しく」把握することが必要です。

なお、これらを把握したうえで、「働き方・休み方改善ポータルサイト(厚生労働省)」が提供している「組織診断」をすると、「見える化」することができますし、効果測定に使うことも出来ます。

社内の現状把握③「意識」を把握する

社内の現状把握の3つ目は「意識」です。

これはズバリ、「社員が本音でどう思っているか」です。

数字とは違いどこにも明確に現れていない点で非常に難しいテーマでもあり、裏を返せばこの「意識」把握をせずにすすめる組織改善は何の意味も持たない、ともいえるほど重要なテーマでもあります。

社員が何を思っているのか、どんなことを考えているのかを知る方法はいくつかあります。

・社内アンケート、従業員意識調査
・個別面談
・聞き取り調査(ヒアリング)
・改善会議

全て行うのも良いと思います。
現在の風土に合わせて、組み合わせて行ってみてください。

従業員意識調査を実施する際は、決まって経営者の方が「どんな結果が出るか楽しみでもあり、怖くもある」と言われます。
おっしゃる通りだと思います。

しかし、「何を思っているか・考えているか」を把握しない中で進める方が、ずっと「怖い状態」でリスクの高い状況であるといえるのではないでしょうか。

なお、会議を行う際に、あえて不満を爆発させる方法もあります。
「会社に対する不満」を有効に活用!あえて爆発させることで次に進めるたった1つの方法とは」を参考にしてみてください。

また、個別面談をされる時の注意点は、「その面談、本当に機能していますか?個人面談をするときに気をつけたい10のポイント」をご覧ください。

社内の中でなかなかヒアリングが難しい時は、外部の専門家をいれる、従業員意識調査を外注するというのも一つの方法です。

目的は「社員の意識を先入観や思い込みではなく、正しく把握する」こと。

そのために適切な方法を選んでみてください。

■まとめ

今回は、働き方改革の進め方(4)として「社内の現状把握の方法」について見てきました。

以前流行ったダイエットに「レコーディングダイエット」というものがありました。
これは、「食べたものを記録するだけで痩せる」という驚愕のダイエット。

しかし、この方法は非常に的を射ています。

なぜかというと、何か問題解決するときや改善するとき、成功のポイントとなるのは「正しく現状把握をしているかどうか」だからです。

つまり、よく現状も分からないまま「何かやらなきゃ」とやみくもに手を出しても、的外れなことが多いというわけです。

働き方改革も同様で、「世間で言われる残業削減」をやってみたが、余計に仕事が回らなくなってしまったということは良くある話。

皆さんの会社にとっての“不満”を“未来に向けた課題”に捉えなおし、着実に組織変革を進めるために、しっかりと社内の現状把握をなさってから次のステップに進んでくださいね。

なお、言うまでもありませんが、従業員意識調査や個別面談をするときに、必要なことは「目的をしっかりと共有すること」。

「なんでこんなこと聞くの?」
「これを聞いてどうなるの?」
ということが分からない中では、真剣に取り組み用がありません。

しっかりと「目的を共有してから」はじめてくださいね。
(参考「社内会議・プロジェクト開始時に共有すべき3つのこと(1)目的

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